2013年1月8日火曜日

「若手を積極的に登用」について思うこと

企業の採用ページなんかを見ていると、よく「うちは若手を積極的に重要な仕事やポストに登用する社風です!」といった宣伝文句を見かけます。
新卒で入った会社に入ったばかりの頃、比較的伝統的な年功序列の社風な会社への反発心からか、僕も「若手を積極的に登用」している会社が生き生きとしていてよい会社だろうと単純に思っていました。なので、何かの機会に上記のような宣伝文句を見ると「いいなー、いいなー」とジェラシーを感じていました。
 でも、アラサーになった今(アラウンドじゃなくてジャスト30なのでジャスサーか)、このような宣伝文句についての感じ方が少し変わりました。

 一人若手を重要なポストに登用したら、一人ベテランが重要なポストから外れないと、釣り合わないのではないか、と思うようになりました。一つの組織にある重要な仕事やポストって無限ではなくて、有限だと思うからです。何を重要な仕事やポストとするかは難しい問題ですが、こういう文脈で語られる「重要な仕事やポスト」は実際に手を動かす現場作業ではなく、マネジメントや全体の方向性を決めるような上流の仕事だと思われます。

なので、「若手を積極的に登用」という宣伝に惹かれてその会社の採用試験を受ける場合は、ベテランが現場作業に積極的にアサインされているだろうか、という裏面からの観察も必要だと思います。つまり、ベテランから現場臭さが感じられるだろうか、という視点です。「重要なポスト」から「現場作業」へと移るベテランなくして、「若手の重要なポストへの登用」は有り得ないからです。
もし、ベテランからマネジメント臭さしか感じないのに、 「若手を積極的に登用します!」と宣伝している会社があったとしたら、僕は「本当かなぁ」と思ってしまいますね。

自分の数年の会社員経験や周囲からの話では、そのような両面からの視点に耐えうる会社はあまりありません。では、若手が積極的に登用される会社は存在しないのか、というとそうではありません。若手しかいないベンチャーと呼ばれるような会社では若手がCEOやCTOやCCOを勤めています。ただ、ベテラン社員がしっかり存在するような会社では、そのような会社は少ないのではないかと思います。

ベテランが現場の仕事をする、というと「降格」、「減給」といった悪いイメージを想起してしまう方もいるかもしれません。 自分はそうは思いません。現場に入ることでしかわからない問題点に気づくことができます。それを再びマネイジメントのポストに戻った際に活用し、改善したり新しいビジネスモデルを作ったりすることができると思います。マネジメント然としている人が現場からの報告だけで気づくのは相当難しいです。

「40歳台以降のおっちゃん、おばちゃんが、現場の細かいITの作業を覚えられるはずがない!」という意見があるかもしれません。でも、うちのアラウンド60の母を見ているとそうは思わないんですよね。最近うちのパソコンがWindowsからmacに変わったのですが、「あらmacのほうが使いやすいわね」とかいって、割とさくさく使いこなしていってるんですよ。なぜ若い人がITに強くて、高齢者がITに弱いかというと、若い人は「ITを使う文化」に所属しているからITに強くて、高齢者は「ITを使わない文化」に所属しているからITに弱いのではないかという気がしていて、文化の問題の側面が強いのではないかと思います。うちでは僕や姉が親のITのサポート役になるようにしているので、割とそのような文化を共有できているのだと思います。丁寧に教えれば40~60歳台でも20~30歳台との差は思ったほど大きくないのではないかと思います。もし、多少アウトプットに差があるとしても、上述した、「現場でしかわからない問題に気づける」というメリットで十分ペイできると考えます。

また、「40台以降のおっちゃん、おばちゃんに現場作業を教えて育ててもすぐ定年になっちゃうからもったいないじゃん」という意見があるかもしれません。ただ、それって20年、30年この会社やビジネスが存在する、という考えの前提での感覚だと思います。でも、昨今起るビジネスのサイクルの期間ってもっと短くなっていると思うのです。だから、20年、30年先のことを考えてもあまり意味がないかな、と考えます。

そもそも、80~90歳とかまで普通に生きる時代で、20歳台と40歳台の差ってどんどん小さくなっている気がするし。

若者と高齢者のITスキルの差は文化の違いと述べましたが、逆に高齢者の文化でも若者に有用なものはきっとあるはずなので、積極的に「異文化交流」をするべきだと思います。その一つの例として、「若手を積極的に登用+ベテランを現場作業にアサイン」ということです。

では、なぜこのような異文化交流があまり行われないのでしょうか。若者としては「おいしいポストを放さないベテランのせいだ! 」とベテラン側のせいにしたくなるかもしれません。ただ、それも一面的な見方であるように思います。

先日、ある会社の新卒採用のページで、「現在の日本の就活に違和感を感じる若者来たれ!みんな同じ真っ黒な就活スーツに違和感を感じないだろうか?うちは個性、多様性を尊重します。既卒やフリーターも積極的に採用します!」みたいな感じで、かなりラディカルな見せ方をしているのをみました。そこで、その時自分も今後の進路を考えていたということもあり、メールで「30歳でも大丈夫ですか」的な質問してみました。多様性を尊重しているのだから、もしかしたら、と思ったのですが、結果は「30歳台は対象にしておりません。」とのことでした。まぁ、その回答には悪気があったのではなく、30歳台の人にこのような「現場で下流な仕事」をさせられない、みたいに思っているのだろうと思います。(「多様性を尊重」って言ってるのに年齢で切るのはおかしな話ですが。)

つまり、何が言いたいかというと、 仮にベテラン側がいわゆる「若手がやるような仕事」をやろうとしても、させてもらえない現実があるのです。ようするに、この社会では、「何歳はどのようなポスト、仕事につく」というのが前提として共有されており、それに反することはなかなかできないようになっているということです。いわゆる年功序列社会です。

とはいえ、そんな社会がやだなーやだなー、といっててもしょうがないので、とりあえず生きます!
あと、「異文化交流 」が起きやすくなるようにすればどうすればいいのかなぁ、と日々考えていたりします。